期待値の性質一覧と証明

統計量の性質と計算

統計を学んでいると、期待値に関する計算がよく出てきますが、期待値の基本的な性質が分からないと理解が進みにくいと感じます。そのため、ここでは期待値が持つ性質をまとめて、証明を掲載しています。

期待値の性質

まず初めに、連続型確率変数について、期待値の定義を示します。
$$E(X)=\int_{-\infty}^{\infty} xf(x) dx$$
期待値の性質では、\(X\) に定数を足したり、定数倍を行ったりします。
このとき、期待値の定義式の中の \(x\) の部分が変化します。

それでは、期待値の性質を見ていきましょう。
よく使われるのは以下の3つです。
確率変数を\(X\)、定数を\(c\)とします。

  1. \(E(X+c)=E(X)+c\)
  2. \(E(cX)=cE(X)\)
  3. \(E(X+Y)=E(X)+E(Y)\)

いろいろな式があり、混乱しやすいかもしれませんが、1.~3. の特徴は期待値の線形性を表しています。

つまり、確率変数に 1 を足せば期待値も 1 だけ足され、確率変数が 2 倍になれば期待値も 2 倍になるということです。

上に挙げた性質は、どのような確率分布でも成り立ちますので、非常に応用範囲が広いです。

次節で、1.~3. の性質が成り立つことを確認します。

期待値の性質の証明

以下では連続型確率変数の場合について、期待値の性質を証明してみます。

証明は期待値の定義に沿って行います。

まずは1. の証明からです。
\begin{align}
1. E(X+c)&=\int_{-\infty}^{\infty} (x+c)f(x) dx\\
&=\int_{-\infty}^{\infty} xf(x) dx+c\int_{-\infty}^{\infty} f(x) dx\\
&=E(X)+c\\
\end{align}
2行目から3行目を計算するときに、全区間の確率の和は1であるという事実を使っています。
続いて、2. の証明です。
\begin{align}
2. E(cX)&=\int_{-\infty}^{\infty} cxf(x) dx\\
&=cE(X)\\
\end{align}
\(c\)は定数なので積分の外に出すことができます。
最後に3. の証明を示します。
\begin{align}
3. E(X+Y)&=\iint_{-\infty}^{\infty} (x+y)f(x,y) dxdy\\
&=\int_{-\infty}^{\infty} x(\int_{-\infty}^{\infty} f(x,y) dy) dx+\int_{-\infty}^{\infty} y(\int_{-\infty}^{\infty} f(x,y) dx) dy\\
&=\int_{-\infty}^{\infty} xf(x) dx+\int_{-\infty}^{\infty} yf(y) dy\\
&=E(X)+E(Y)\\
\end{align}
2重積分となるので、2行目で括弧の中を先に計算します。
括弧の中はそれぞれ\(x\)と\(y\)の周辺確率密度関数となっています。

周辺確率密度関数については以下の記事をご覧ください。

以上で期待値の性質の証明は終了です。

期待値が線形性を持つ理由は、積分という計算そのものが線形性を持つからです。
3.の証明が少し難しいですので、ゆっくりと計算過程を追ってみてください。

まとめ

本記事では、期待値の性質をまとめました。
3つの性質を再掲します。

  1. \(E(X+c)=E(X)+c\)
  2. \(E(cX)=cE(X)\)
  3. \(E(X+Y)=E(X)+E(Y)\)

式をそのまま丸暗記するよりも、期待値は線形性があると覚えた方が忘れにくいです。

統計の理論計算では期待値の性質がよく使われますので、この機会にマスターしましょう!

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