ベイズの定理ってどうやって使うの?
記号ばっかりで、公式を覚えても問題が解けない…
本記事では、ベイズの定理を具体的に使う方法を解説します。
例題を2つ用意しました。
- 病気にかかっている確率
- モンティホール問題
どちらも有名な問題で、ベイズの定理を知らないとまちがえてしまいます。
例題にベイズの定理を当てはめる方法を詳しく説明します。
ベイズの定理の公式
ベイズの定理は結果がわかったときに、原因を求める確率を計算することができます。
\(B\) が結果で、\(B\) の原因として \(A_1\)、\(A_2\) の2つが考えられるとき、
\(A_1\) が原因である確率は、以下の式で求めることができます。
$$P(A_1|B)=\frac{P(B|A_1)P(A_1)}{P(B|A_1)P(A_1)+P(B|A_2)P(A_2)}$$
原因と結果の関係を図で表すと、以下のようになります。
ベイズの定理の証明や、定理のイメージを理解したい方は、以下の記事をご覧ください。
さて、本記事ではベイズの定理の使い方を、2つの例題で見てみます。
例題1 病気にかかっている確率
病気にかかっている確率を求める問題は、ベイズの定理を使う問題として非常に有名ですので、解法は覚えてしまうくらいが良いです。
病気Aにかかっている人のうち、90%が陽性だから、
タロウ君が病気Aにかかっている確率は90%
直感的には 90% と思ってしまいますが、実は 90% ではありません。
なぜなら、病気Aにかかっている人は日本全体の 1% しかいないからです。
図を見ていただくと分かるように、病気Aでない人が圧倒的に多いので、
まちがって陽性と診断される(偽陽性)影響が無視できないからです。
ベイズの定理を使って解くのが正しいやり方になります。
病気Aにかかっている確率を \(P(A_1)\)、病気Aでない確率を\(P(A_2)\)、陽性と診断される確率を \(P(B)\) とおくと、問題文から以下の確率が分かります。
- \(P(A_1)=0.01\)…病気Aにかかっている人が人口の 1%
- \(P(B|A_1)=0.9\)…病気Aにかかっている人のうち、陽性になる確率は 90%
- \(P(B|A_2)=0.05\)…病気Aでない人のうち、陽性になる確率は 5%
ベイズの定理の式に当てはめると解くことができます。
\begin{align}
P(A_1|B)&=\frac{P(B|A_1)P(A_1)}{P(B|A_1)P(A_1)+P(B|A_2)P(A_2)}\\
&=\frac{0.9\times 0.01}{0.9\times 0.01+0.05\times 0.99}\\
&=0.15
\end{align}
結果は 15% です。陽性と診断されたのに、実際に病気Aにかかっている確率は小さいと思いませんか?
陽性と診断されたからといって病気Aにかかったと決めつけるのではなく、冷静に判断することが大切です。
病気にかかっている確率の問題は、人間の直感と反するので、まちがえやすいです。
例題2 モンティホール問題
モンティホール問題も病気にかかる確率と同じく、人間の直感に反する問題です。
問題の状況設定がややこしいので、図を使って整理します。
たとえば、挑戦者が左の宝箱を選んだとします。
残った宝箱のうち、司会者は空の宝箱をオープンします。
たとえば、司会者が右の宝箱をオープンしたら、挑戦者は残った方の宝箱のどちらかを、もう一度えらび直すことができるということです。
最初にえらんだ宝箱を変更した方が良いのでしょうか?
ちょっと考えてみましょう。
…
…
…
答えは決まりましたでしょうか?
正解は「宝箱を変更した方がよい」です。
え?
宝石はランダムに入れられてるから両方とも 50% じゃないの?
と思いますよね。私もはじめてモンティホール問題を解いたときは、同じように思いました。
両方とも 50% でない理由は、「同様に確からしくない」からです。
たとえば、最初に左の宝箱を選んだとき、左に宝石が入っている確率は 1/3 です。
司会者が中央の宝箱を開けても、右の宝箱を開けても、左に宝石が入っている確率は 1/3 で変わりません。
司会者が宝箱を開けたあとでは、宝箱は2つしか残っていませんから、宝箱を変更すると、確率は
$$1-\frac{1}{3}=\frac{2}{3}$$
となるのです。
…まだ納得できませんか?
ベイズの定理を使って確認してみましょう。
最初に左の宝箱を選んで、司会者が右の宝箱を開けたとします。
このとき、宝石が入っているのは、左または中央です。
- \(P(A_1)\)…左の宝箱に宝石が入っている確率
- \(P(A_2)\)…中央の宝箱に宝石が入っている確率
- \(B\)…司会者が右の宝箱を開けたという情報
ベイズの定理にあてはめると、司会者が右の宝箱を開けたときに、左の宝箱に宝石が入っている確率は、
\begin{align}
P(A_1|B)&=\frac{P(B|A_1)P(A_1)}{P(B|A_1)P(A_1)+P(B|A_2)P(A_2)}\\
&=\frac{\frac{1}{2}\times \frac{1}{3}}{\frac{1}{2}\times \frac{1}{3}+1\times \frac{1}{3}}\\
&=\frac{1}{3}
\end{align}
司会者が右の宝箱を開けたときに、中央の宝箱に宝石が入っている確率は、
\begin{align}
P(A_2|B)&=\frac{P(B|A_2)P(A_2)}{P(B|A_1)P(A_1)+P(B|A_2)P(A_2)}\\
&=\frac{1\times \frac{1}{3}}{\frac{1}{2}\times \frac{1}{3}+1\times \frac{1}{3}}\\
&=\frac{2}{3}
\end{align}
となって、宝箱を変更するほうが当たる確率が高くなります。
モンティホール問題は一度見たことがないと、まちがった答えを出してしまいます。
まとめ
本記事では、ベイズの定理を使いこなすために2つの例題を紹介しました。
- 病気にかかっている確率
- モンティホール問題
どちらも直感で答えるとまちがえます。
ベイズの定理は記号が多いので難しそうに感じますが、1つ1つの記号の意味を確認しながら計算すると、機械的に解くことができるので、とても便利です。
ぜひ使い方をマスターしましょう。